脇道へ逸れてしまったスチール愛好家が辿り着くひとつの答え
記念すべき1回目の投稿は、僕が心から愛して止まない自転車について。
ロードバイク、5、6年前くらいからじわじわとユーザーが増え始め、
一時期、アニメや漫画の影響で一気に人口の増えた自転車だ。
現在ではそのブームも落ち着いて、それでも好きな人、昔から好きな人が残っている
というイメージ。
当の僕は子供の頃に親に自転車で色んなところに連れ回され、
中学生の頃には、ママチャリで往復30キロほど走って近隣の市町村へ行ったりしていた。
その延長で高校生の頃にクロスバイクを買い、ロードバイクを買ったという綺麗な段階
を踏んでいるタイプの自転車乗りである。
学生の頃には毎日往復60キロの道のりをロードバイクで通学し、
帰宅してからスポーツ量販店の自転車売り場でアルバイトしていた。
そして社会人になってからも色々社会の荒波に揉まれ、
年数にすると結構長い期間ロードバイクなどのスポーツバイクと触れ合っている。
その中で、クロモリやアルミ、ハイエンドのカーボンまで様々な自転車を乗り継いできた。
今年の春、そんな自転車ライフを送った結果行き着いたひとつの答えのようなフレームを手に入れた。
Cinelli MASH work である。
このフレームは、イタリアの老舗ブランドCinelli(チネリ)とピストバイクのムービーが
世界的に人気となったアメリカのMASH(マッシュ)とのコラボレーションフレームである。
ということはもちろんこの自転車はピストバイクである。
ピストバイクとロードバイクとカではタチは似ているものの、ギアが前後共1枚しかないという大きな違いがある。
また、ピストバイクでは固定ギアというホイールとクランクがダイレクトに繋がる仕組
(三輪車的な)のギアを選べるのも醍醐味である。
そんな、ピストバイクはシンプルな見た目も人気の要因のひとつで、
街中でも最近よく見かけるようになった。
話は戻すが、なぜこのワークがスチール愛好家の辿り着くひとつの答えなのかというと、
この自転車には最低限のルールしか存在しないのである。
一体なんのことかというと、例えばロードバイクであれば、ここはこれ、この部分は
これしかダメ、などルール(制約)が多かったり、レースで使っているチームのイメージが付きがちなのに対し、
このフレームは基本的にBBとヘッドパーツだけ決まった規格のものを使えば、
あとは自由なのである。
確かにリアはシングルという制約はある。(このフレームの後継機ではベルトドライブも使えるようになった。)
だが、フリーギアと固定ギアを選べる、タイヤの幅も38Cまでなら選び放題、
ブレーキもカンチ、Vブレーキが使える、ハンドルもフラット、ライザー、ブルホーン、
ドロップと基本的にどんなハンドルを入れても様になる。
フロントラックだって使える、スポーティなサドルも革サドルも似合う。
と、乗り手の個性を最大限に活かせるフレームである。
そして、このフレームの極めつけは、
「錆」である。
このフレームのトップチューブには「RUST NEVER SLEEPS」と注意書きがある。
直訳すると、錆は決して眠らない。つまり、錆が出るよ。とのこと。
そもそもこのフレームは、コロンバス社製のパイプにクリアを吹いただけという
フレームなので、錆が出ることは至極当然なのである。
メーカー曰く、錆によるデザインの変化を楽しもうとのこと。
ここにスチール好きの行き着く先が見える。
鉄が好きすぎて、錆までもが愛の対象なのである。
錆一つ一つを愛でる。傷が付いてショックを受けるのではなく、
そこからどんな過程を経て錆が発生するのかを想像する。
一種「変態」の世界である。
だが、何事も極めれば普通ではなくなる、一般的でなくなることは暫し起こりうる。
それを考えればこの「錆」も一つの極みなのではないだろうか。
おしまい。